「おいしい」を作る人たちの、想いと暮らしかた
みなさんは行列に並んででも食べたいモノ、ありますか?
私は待つことが苦手な方なので、並んで待ってまで食べるなんてことはほぼないです。
いや、なかったんです、今までは‥
しかし、そんな並ぶのが苦手な私をいとも簡単に並ばせてしまう、強者のお店があります。
その正体は、連日店の外に行列を作っているこちらのお店 、『ヨダレカレー』。
2016年にこの場所にオープンして以来着実にファンを増やしていき、今やカレー好きで知らない人はいないと言っても過言ではないくらい人気店となった、正真正銘の実力派カレー屋です。
近年関西で盛り上がっている“スパイスカレー”。
そのカレーカルチャーをベースに「ヨダレ流」にアレンジしたスパイスカレーに、今、やみつきになっている人が続出!
ほんと、クセになる旨さなんですよねー。
そしてお米はすべて、店主自らご家族と一緒に作ったお米を使用しているというこだわりよう。
ここでしか食べれない味を求めて、毎日県内外からお客さんが集まってきます。
そんな、食べる人を虜にするカレーを生み出しているのは、『ヨダレカレー』 の店主、坂本 康輔さん。
奥さまの沙希さんとお店を経営されています。
今回はお二人に、カレー作りへの想いや暮らしかたについて、たっぷりお話を伺ってきました!
— なぜカレー屋さんを始めようと思われたのですか?
康輔さん:当時働いていた飲食店で毎日賄いを作っていたんですが、ある日いつもの賄いに飽きたので、適当にカレーを作ってみたんです。
そしたらめちゃくちゃ不味くて。(笑)
今までは和洋中ある程度うまく作れてたんですけど、初めてうまく作れなかった。
それで簡単に作れないカレーの面白さに魅力を感じて、「美味しいカレーを作りたい!」という気持ちが生まれました。
そこから日に日に「カレーを作りたい」欲求がどんどん高まっていく一方でしたね。
飲食店で働いて10年目くらいで、そろそろ独立したいなと思っていたこともあり、ちょうど運よく空き店舗も見つかったのでお店を始めることにしました。
— その頃はもうご結婚されていたのですか?
沙希さん:店舗が見つかった時はまだ結婚していなかったんですが、主人から「結婚してお店を一緒にしてほしい」という事を言われまして・・・
主人の決意を感じたし、純粋に楽しそうだと思ったので結構すんなり受け入れました。
それを私の親が理解してくれたのがありがたかったですね。
康輔さん:まだお店も始まっていない状態だったんですけど、ご両親に事業計画書とかも全部見せて、ビジョンもしっかり伝えたうえで結婚させて欲しいとお願いして、許しをいただきました。
自分の中で、結婚をせずに自分勝手にお店をやるっていうのは筋違いだなと思ったんです。
— ご主人の男気も、奥さまの決断もすごい!素敵です・・・。
熊本にカレー屋さんはいくつもありますけど、『ヨダレカレー』みたいに“旨くてかっこいいカレー屋さん”って、他にあまりないと思うのですが・・・
康輔さん:そうですね。ちょうどお店をやろうと思っていた頃、たまたま僕の好きなバンドの方がスパイスカレー作りにハマっていたのをSNSで見て、それを辿っていったら、大阪の方でスパイスカレーがかなり盛り上がっているという事を知りました。
大阪のカレー屋さんの中には、現役のバンドマンだったり音楽に携わっている方が多いんです。
お店を始めた当時はまだこういうジャンルやこういう見せ方をするカレー屋が熊本にほとんどなかったので、その大阪のカレーカルチャーを自分たち流にアレンジして熊本に持ってきたら面白いんじゃないかなって。
— 店内の雑貨やグッズなども面白いものがたくさんありますが、何かこだわりがあるんですか?
康輔さん:そこはあまりこだわってないです。
自宅に招いてもてなしているようなラフな感じにしたかったんで、あえて店内のBGMも普通に家で聴くような音楽を流して、インテリアや雑貨とかもあまりこだわらずに二人の好きなものだけを置いてます。
カレーってそんな気合い入れて食べるものじゃないと思ってるので、そのくらいの気軽な感じで来て欲しいですね。
— いつも使われてる炊飯器にも、音楽やファッションブランドのステッカーが貼ってありますよね。あれがまたかっこいい!
康輔さん:昔はスケボーとかギターに貼ってたんですけどね。
IT関係の人やDJが、PCにステッカー貼るような感覚です。(笑)
貼ってると、ステッカーくれた人たちも喜んでくれるんで・・・
— 大阪には定期的に行かれているのですか?
沙希さん:半年に1回くらいは行って視察してますね。
康輔さん:大阪ではスパイスカレー屋がどんどん増えてるんで、アンテナ張ってます。
同じカレー屋でもお店によって味も作り方も全然違って、それぞれに個性があるんです。
自由度の高さや「ルールがない」ってところがスパイスカレーの面白い所。
僕たちもお店を始めて3年なので、まだお店の味を守るとかいう段階ではなく、新しい味、新しいことに挑戦する時期だと思って、今は好き勝手やらせていただいてます。(笑)
— そういった変化を楽しめる人が、『ヨダレカレー』に魅力を感じているんでしょうね。
毎日お忙しいと思いますが、お二人のパワーや原動力になっていることは何ですか?
康輔さん:自分たちと同じように個人でお店をしている人たちとの時間です。
パン屋、フランス料理屋、古着屋・・・異業種だけど自分たちと同じように頑張っている仲間が、自然と周りに増えました。
お互いが相手から何か学ぼうというスタンスで、みんな居る。
くだらない話から熱い話までできる仲間がいて、本当に恵まれてるなと思います。
沙希さん:他のお店さんのことを尊敬しているし、会うと刺激をもらえる。自分たちも頑張ろうって思えるんです。
— 日々どんな想いでお店に立っていますか?
康輔さん:もう今って、お店で食べるものは美味しくて当たり前の時代。
これからは、初めて食べる経験や驚き、発見に需要が変化していくと思っているんです。
なので、美味しいのはもちろん、今まで食べたことのないような「食体験」をしてもらうということを考えて、最近は取り組むようになりました。
沙希さん:私にとって、カレーを提供した時のお客さんの「わ~!」という反応だったり、美味しく食べてくださってる姿を間近で見れることが最高の喜びですね。
楽しみにして来て下さってるんだな~と実感します。
康輔さん:行列に並んででも食べたいと思ってくださるのは本当にうれしいことです。
それと同時に、「その人たちを納得させるものを作らなきゃ」というプレッシャーも生まれますが、だからこそ妥協せずに突き詰めていけてるんだと思います。
— 毎日ずっと一緒に生活をされている中で、お二人の意見がぶつかったりとかはないんですか?
康輔さん:仕事に関しての意見の言い合いとかはもちろんあります。
「こうやったほうがいいね」とか「これは良くないね」とか。
すれ違いがないので、その都度すぐに話し合えて解決は早いかもしれないですね。
沙希さん:よく言われがちですが、夫婦でずっと一緒に居るのが苦しいとかも感じたことはないです。
休日はお互いにひとりの時間を過ごすこともあるし、一緒に居る時間とひとりで居る時間のバランスが取れてるんだと思います。
康輔さん:あと上手くいく秘訣としては、「お互いの理解」かな。
お互いのいい所は吸収して、相手に指摘されたこともまず一回は受け止める。
それでも違うなと思った時は反論しますけど・・・(笑)
— 最後にお二人の今後の未来図を教えてください!
康輔さん:現状維持です。今のままコツコツと自分たちらしいスタイルで続けていけたらいいなと思います。
この場所もすごく気に入ってるので、この町と一緒に年数を重ねていけるのが理想ですね。
あとは、自分の中でこうできたらいいなという理想がもうひとつあって・・・
奥さんはもともと花屋で働いていて、今でもずっと花が大好きなんです。
僕と出会っていなければきっと今も花屋を続けていたと思う。
だから今は二人で頑張って、いつかは奥さんがひとりでやれるくらいの大きさのお店で花屋をさせてあげたいって、始めた時から思っていたんです。
そして『ヨダレカレー』は、将来的に僕ひとりでやるのもいいなぁなんて思ってます。
ちょっと先の話ですけどね。
カレー屋と花屋の併設とかもアリかも!(笑)
今まで食べたことのないような「食体験」をしてもらいたいと言う、『ヨダレカレー』のカレー作りは、料理の枠を超えて、もはやクリエイティブ!
そしてとにかく、ご主人のカレーへの熱量がスゴイんです。
新しい美味しさの発見や、見た目の美しさへの驚き。
作る人の技術やセンス、想像力や独創性がカレーの個性を大きく左右する、思っていたよりもずいぶん芸術的で奥深い、スパイスカレーの世界。
こうやって見ると、カレー作りって作る人の生き方そのものなのかもしれないな・・・なんて思うのです。
ますますハマりそうです、私。
そして何より印象的だったのは、お二人の素敵な関係。
互いを尊重し、相手を思いやる。
「素敵な夫婦のカタチ」がそこにはありました。
これからも進化し続ける『ヨダレカレー』から目が離せませんね!
ヨダレカレー
[ 住所 ] 熊本県熊本市南区田井島2丁目3-1 タイホウビル1階
[ Tel ] 096-200-5608
[ 営業時間 ]12:00-15:00(L.O 15:00)、18:30-21:00(L.O 21:00) ※売り切れ次第終了
[ 定休日 ] 火曜日+不定休